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十二使徒の一人で、老子・其時、草色の真綿帽子を冠り、糸織の綿入羽織を着た、五十余(あまり)の男が入口のところに顕(あらは)れた。午後の光は急に射入つて、暗い南窓の小障子も明るく、幾年張替へずにあるかと思はれる程の紙の色は赤黒く煤(すゝ)けて見える。斯(こ)の庭に盛上げた籾の小山は、実に一年(ひとゝせ)の労働の報酬(むくい)なので、今その大部分を割いて高い地代を払はうとするのであつた。